現代数学レクチャーシリーズ 2024 3月 微分方程式祭り

小池 開先生

東京工業大学 理学院数学系 助教

＜経歴＞
慶應義塾大学大学院理工学研究科博士後期課程修了

京都大学大学院工学研究科ポスドク研究員（日本学術振興会特別研究員PD）

東京工業大学理学院数学系助教（現職）

=講演内容=

微分方程式は様々な物理現象のモデルとして現れます．例えば投げ上げた球が放物線を描くことや，振り子が周期的な運動をすることなどは，簡単な微分方程式を解くことで説明できます．また，こうした単純な現象だけでなく，気象や時空の歪み，物質の電子状態など，もっと複雑な現象も微分方程式を用いて記述することができます．ところが，このような微分方程式には簡単な解の公式がないどころか，そもそも本当に解があるのかどうかさえ，しばしば深遠な数学的ミステリーの題材となってしまいます．このレクチャー・シリーズでは，流体現象を記述する微分方程式であるNavier–Stokes方程式を題材に，微分方程式をめぐる数学的探究の一端を紹介します．

木下 真也先生

東京工業大学 理学院数学系 助教

＜経歴＞
名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程修了

Universität Bielefeldポストドクター

埼玉大学大学院理工学研究科にて日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職

=講演内容=

1917年、日本の数学者、掛谷宗一は次のような問題を提示しました:「長さが 1 の針 (線分) を図形内で一回転させることができるような平面上の図形で、最も面積が小さいものは何だろう？」
このシンプルな問題は、1928年にロシアの数学者ベシコヴィッチによって、針を一回転させることが可能な平面図形で、いくらでも面積が小さいものが構成できる、という驚くべき形で解決されました。このレクチャーシリーズでは、この「掛谷の針の問題」の紹介と、この問題を始まりとした、現在も未解決な掛合予想や、その調和解析、偏微分方程式との繋がりについてお話します。

現代数学レクチャーシリーズ皆勤賞の正井先生から、今回のテーマである微分方程式に関する問題をいただきました。
腰を据えて取り組めるような解きごたえのあるものを頂いたので是非取り組んでみてください。
通勤の電車やお風呂タイムなどで考えてみると何かひらめくかもしれません。

解答はどなたでもご応募いただけます。提出方法もpdf、解いた紙を撮影した写真データなどご都合の良い形で可能です。
当日は正井先生から解説と皆様の解答の中からいくつか紹介をいただきます。
皆様の挑戦をお待ちしております！

*問題はこちらから
*提出はこちらのフォームから

三浦 達哉先生

東京工業大学 理学院数学系 准教授

＜経歴＞
東京大学大学院数理科学研究科博士課程修了

Max Planck Institute for Mathematics in the Sciences (Leipzig) Postdoctoral Fellow

東京工業大学理学院数学系助教を経て現職

=講演内容=

子供の頃に下敷きを曲げて遊んだ経験がある方も多いと思います。実はその断面曲線の形状は、弾性曲線理論によって数学的に説明することができます。弾性曲線の変分解析は非常に古典的で、今から約280年前、1744年にレオンハルト・オイラーによって初めてなされました。一方で、関連する研究は現在でも脈々と続いており、現代数学的な観点からも重要な未解決問題が数多く残されています。本講演では弾性曲線理論の初歩的な導入から始め、現代の研究にどのようにつながるかについて解説したいと思います。